映画「ヒメアノ〜ル」(ネタバレ有)


ついにこの日がやってきました。

森田剛くんの単独初主演映画「ヒメアノ〜ル」公開日。私は自身のTwitterでも何度か呟きましたが、年不相応のビビりです。どのくらいのビビりかといいますと、名字の前にビビるをつけた方がいいんじゃないのか?と真剣に考えるくらいのビビりです。どうも。初めまして、いっぴんみ。*1

 

まぁそんな私はここ数ヶ月の間ずっと悩んでいました。公式サイトを覗いても公式さんのTwitter*2を覗いてもVクラさんに聞いても最後の砦である映画の予告を見ても、怖い。とにかく怖い。そこにいたのはわたしが知っているアイドルの森田剛ではありませんでした。ああどうしよう。剛くんの単独初主演。ぜひこの目に焼き付けたいと思っていたのに。見れる気がしないよ、、、。

映画祭*3に出品されて剛くんがイタリアに行こうとも、現地で称賛を浴びようとも、怖さが勝ってどうも勇気が出ない。う〜ん。今回は諦めるようかな。こんな状態だったのでもちろん前売りも購入せず。
 
しかしGWが過ぎ、ああもうすぐ公開だな〜とぼんやり考えていた頃、驚くべきニュースが舞い込みました。
森田剛、しゃべくり007出演決定!!
ええ、ザワザワしましたよ。しましたとも。ブルーライト浴びすぎたかと自分の目を疑いました。私は学校へ行こうドンピシャ世代なので森田剛という人から出てくる言葉ひとつひとつが凄まじい破壊力を持っていることはもちろん知っていました。でも、口数自体はそんなに多くない。どうするんだろう。剛くんなに喋るんだろう。ああそんなことよりこの記念すべき日は残しておかなければならぬ!!!そう思って脅威のスピードで録画予約したことを覚えています。
 
そして次々と発表される剛くんの出演情報。5/23からは2日に1回、必ず森田さんがTVに出ているわけですよ。森田さんが。森田さんが!!!なんという奇跡!!!生きててよかった神さまありがとう!!!!!
そんなこんなで必死に剛くんを追いかけていたわけです。TVには剛くん。Twitterにはヒメアノ〜ル公開を心待ちにしているVクラさん。諦めた方がいいというあの時の決意がグラグラと揺らぎ始めました。やっぱり見たい!だって剛くん単独初主演だもん!!!!!
 
気付いた時にはチケット買っていました。なるほど。最近の映画館はオンラインで席取れるのかすげえな。完全に時代の流れについていけていませんがびっくりしながら事前購入完了。我ながら単純。チョロすぎ。
 
2016/05/28
ドキドキしながら15分前に到着。この時点で原作を読んだことがないわたしが持っていた予備知識は、

  • 剛くんが演じるのはサイコキラー森田
  • 快楽殺人?
  • メッタ刺し、発砲、殴打なんでもありのヤバいやつ
  • 高校の同級生である岡田(濱田岳)くんを殺そうとする
  • ムロさんの安藤なんか気持ち悪そう
  • R-15のグロい映画
  • 前半はコメディ、後半はシリアス
これくらいのものでした。





映画「ヒメアノ〜ル

(ネタバレ、勝手な考察を含みます)

ここから先はネタバレでは済まないほどのネタバレを含んでいますのでまだ観に行かれてない方は読まない方がいいです。本当に。絶対に。私はそんな作品だと思っています。
また、台詞等はうろ覚えな箇所があります。ご了承ください。





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■森田正一の異常性
前半はコメディと聞いていたはずなのに、私は開始早々震えあがりました。
カフェで森田が座っているだけのシーン。ああ剛くん出てきた。それだけなのに、異常、異質、違和感。なんか変。この人怖い。そう思いました。同級生の岡田くんに話しかけられて普通に受け答えして、火をつけたばかりのタバコを消して、言動ひとつひとつは普通の人なのに、なんか怖い。シーンが変わってもどうも拭えない違和感。うーん。もやもやする。
その違和感に気付いたのはおじさんにタバコを注意されたシーン。なにを言われても「いや、もう吸ってないです」をただただ繰り返すだけ。おじさんがちょっと口を開こうものなら食い気味に「いや、もう吸ってないです」。ああ、この人おかしい。ヤバいやつだ。絶対に近づいちゃいけない。咄嗟にそう思わせるには十分なくらいに異常でした。
そしてその後、岡田くんとの飲みのシーン。ここでも森田はその異常性を発揮していました。
安藤さんとユカちゃんの頼みでユカちゃんについて探りを入れ始めた岡田くんが気付いた森田の矛盾。カフェで会った時には「初めて来た」と言い、森田をよく見かけるという安藤さんに関しても「誰かと間違えてるんじゃない」と言っていた。にも関わらず、独り言のようにボソッと安藤さんを「いつもチョロチョロしている」「邪魔」と言った。この矛盾点を岡田くんが「初めてって言ってたのに今いつもって言ったよね」と問い詰めると「言ってないよ」を繰り返す。威圧とか嘘をつき通すとかそんな次元ではなく、そもそもそんな事実など無かったかのように。取り付く島もなく、岡田くんは不審に思いながらもそっかと引き下がるしか無かった。やっぱりこの人おかしい。過剰に表現するのであれば狂ってる。私はそこまで思いました。

■"サイコキラー"森田正一
森田と共に河島からのいじめを受けていた和草くん、彼と一緒に森田を殺そうとした和草くんの婚約者・久美子を鉄パイプで殴りつけるシーン(狂気)。ここと岡田くんとユカちゃんが仲良くしているシーン(日常)とがリンクした瞬間こそが、日常と狂気が交錯した瞬間だったのだと思います。ここからはもうすごい。正直直視できませんでした。怖すぎて。
たまたま森田の近くを通りかかった女性の部屋に侵入して襲いかかったり、夫婦の家に侵入して奥さんを襲った後、その場で食事をしたり、帰宅した旦那さんをメッタ刺しにしたり。このあたりで気付いたのが、この人は欲を満たすために残虐な行為に及んでいるんだということ。もちろん推測ですが。女性を襲うのは性欲を満たすため、現場で食事をしていたのは食欲を満たすため、夫婦を殺めた後その家で寝ていたのは睡眠欲を満たすため。え?殺人現場で普通に生活してるの?なんなんだこの男。狂ってる。帰りたいと思った。もう見たくなかった。

■いよいよ標的はユカちゃんと岡田くんになる
岡田くんの部屋ではなく自分の部屋に帰った時のこと。たまたま隣人と鉢合わせして「変な男がドアを蹴ってたよ」と教えてもらう。その言葉に身の危険を感じたのだろう。ユカちゃんは引越しを決める。
森田は隣人の部屋に上がり込みユカちゃんの不在を確認。どこに行ったかを問い詰め、知らないと答えた隣人に発砲。ここまで来てもやっぱりわかりません。どうしてユカちゃんに執着するのか。森田がストーカーを始めたきっかけも理由も何一つ描かれていません。なんで?なんでそんなにユカちゃんなの?時間が経った今もやっぱりわかりません。うーん。身に覚えがないのにストーカーされる怖さの演出だったのかなぁ。
ユカちゃんと岡田くんを探すために岡田くんの職場付近で待っている森田。そこを偶然安藤さんが目撃する。森田の行動を注意する安藤さん。強い。そして追いかける。めっちゃ追いかける。強い。強すぎる。この人やべぇ、、、(森田とは別の意味で)。銃を向ける森田に「モデルガンだろ」と挑発。そして撃たれる。
ユカちゃんも岡田くんも自分のせいだと責める。ここでようやく岡田くんと森田の関係が明らかになりました。

  • 実は森田と仲が良かったこと
  • 森田がいじめられて距離を置いたこと
  • いじめの主犯(河島)に言われて登校拒否中の森田を「河島が謝りたいって言ってる」と嘘をつき登校させたこと
  • いじめられているところを見て一緒に笑っていたこと
  • あのときの絶望した森田の目が、岡田くんを見ている森田の死んだような目が忘れられないということ
遣る瀬無い。このやり場のない気持ちをどうしたらいい。河島のいじめはえげつなくて、森田を連れてこなければ自分が標的になる。自分を守ってしまったという岡田くん。河島から逃げたのに友達である岡田くんを信じて登校したら待っていたのは屈辱的ないじめだった森田。ただただ苦しかった。河島が許せなかった。

そしてもう一つ私が引っかかったのはこの銃。夫婦の家で警察官から奪ったものだったため、弾が切れてしまったらおしまい。これをなんのためらいもなく捨てたのだ。え、捨てるの?単純にそう思いました。でも冷静に考えてみれば、森田にとって銃は人を殺すための道具で、使えなくなった銃に用はないわけだ。今まで手に掛けてきた人達もそうだったのかもしれない。

そしてついに森田はユカちゃんに辿り着く。ユカちゃんがタクシーから降りたとき、ああここも森田見てるんだろうな、怖いなと思っていたら何も起こらない。ユカちゃん普通に部屋に入って鍵掛けて、何も起こらない。あれ?森田どうした?と思いながら心臓バクバク。絶対どこかにいる。あいつは絶対いる。ユカちゃん気をつけて!本気でそう思いました。
ユカちゃんようやく気付く。窓が割れている。しかも鍵のところ。森田は窓から部屋に入っていました。逃げようとしてもユカちゃん、鍵を掛けてしまったばっかりに森田に捕まる。もう見てられなかった。殴る殴る。血が出ようが関係なし。お願いだから早く帰ってきて岡田くん!!

■森田正一の人間性
ここまで私が見てきた森田正一という男は、阿部ユカという女性に執着し、自分の欲を満たすためになんの躊躇いもなく平気で人を手に掛ける残虐な男でした。岡田くんがずっと忘れられなかった森田についた嘘。絶望した目。当の森田はそこに岡田くんがいたことすら覚えていなかった。そしてユカちゃんを守ろうとする岡田くんに襲いかかる。揉み合いになり2人とも窓から外に投げ出された。警察から逃げようと岡田くんを人質にとり、近くに止めてあった車を奪い逃走する。岡田くんはなんとか説得しようと「本当の森田くんそんな人じゃなかった。優しい人だったじゃない。」と宥める声をかける。興奮状態の森田は振り返り岡田くんの足を刺した。何度も刺した。そして前を向き直すと白い犬が。避けようと咄嗟にハンドルを切った森田は壁に激突する。
犬を避けたんです。一瞬の躊躇いもなく人を殺めてきた森田が、逃走の際、車を奪うために刺した男性を平気で轢いていった森田が、咄嗟の判断で犬を避けたんです。もう、涙が止まりませんでした。ああ、よかった。森田はちゃんと心のある人間だった。そんな風に思った直後、
「岡田くん来てたんだ」「借りてたゲーム返さなきゃ」「お母さーん!麦茶2つ持ってきてー!」
突然幼い少年のような明るい声で話し始めた森田。事故の衝撃で朦朧としていたのかもしれない。警官が駆けつけ森田を確保した時、連続殺人犯、殺人鬼、サイコキラー、そんな森田が最後に口にした言葉が、「岡田くん、またいつでも遊びに来てよ」という、ありふれた、当時も口にしていたのであろう友人に向けたものだったことがまた苦しい。あの無垢な笑顔が苦しい。岡田くんはどんな気持ちで「うん」と返したのだろう。
ラストの回想シーンでの、お互いに少し緊張して話す友達になる少し前の会話。そして、あれはきっと森田の実家なんだろうな。庭にいる白い犬、制服姿の岡田くんと森田くん。2人でゲームをしている。森田くんがお母さんに「麦茶持ってきてー!」という声。当たり前の平凡な日常が、幸せな風景が森田正一という男にもあった。森田正一という人間のどこか一部にこの幸せな風景が残っていた。だから咄嗟に犬を避けたんだと思うんです。その事実が私にとっては唯一の救いです。

ヒメアノール【hime-anole】 名詞/造語
"アノール"とはトカゲの一種である。イグアナ科アノール属に含まれるトカゲの総称。165種ほどがある。
(ヒメアノール=ヒメトカゲ)となるが、"ヒメトカゲ"とは体長10cmほどで猛禽類のエサにもなる小型爬虫類。つまり"ヒメアノ〜ル"とは強者の餌となる弱者を意味する。

森田正一は凶悪な殺人鬼で、映画を観る前は森田くんに狙われる岡田くんのことを指してるのかなぁとぼんやり思っていましたが、いじめる奴が強者か弱者かという議論は今は置いておいて、森田と和草くんに対していじめを繰り返していた河島(強者)に捕食されてボロボロになってしまったのが森田(弱者)だった。森田こそがヒメアノ〜ルだったのかなぁ。と、今はそんなことを考えています。



見終わった後頭が痛くなりました。
自身のTwitterに消耗した、と書きました。
なんとなくモヤモヤして、なんだか消化できなくて、漠然とただ辛くて苦しくて。
原作は読んだことがないのでわかりませんが、あのラストシーンに少しだけ救われた気がします。そんなことを書きたくて、書くことで消化したくて、拙い文章ですが書かせていただきました。
思い出しながらやっぱり悲しくて切なくて泣けてきて、"帰りたかった。見たくなかった。"そんな風に書きましたが、最後まで見てよかった。ああ私はすごい作品に出会ってしまったんだなとそんな気持ちです。

解釈が正しいかわかりません。言葉の選び方を間違っているかもしれません。私の思っていることをちゃんと言葉にできたのかもわかりません。でも残しておきたかった。V6が好きで、剛くんの単独初主演を見届けなければ!と謎の意気込みで向かった先がすごいところだったことを忘れてしまわないように。
きっと森田が剛くんじゃなかったら見に行かなかった。そのくらいR-15というのは私にはハードルの高いものでした。

だらだらと長々と書いてしまいましたが、剛くんがいっぱいメディアに出てきてくれて、映画の宣伝をしてくれて、それでようやく見に行けたようなそんな作品でした。友達にすごくいいから見てよ!と軽率に薦められるような作品ではなかったけれど、見に行ってよかった。そう思える作品でした。

剛くん、本当にありがとう。

Vクラさんはどんな風にヒメアノ〜ルを見たのでしょうか。とても気になります。

*1:セクバニコン特典DVDに収録されている打ち上げにて森田剛が一品目を噛んだことから生まれたギャグ

*2:中の人がすごく可愛らしい

*3:第18回ウディネ・ファーイースト映画祭

*4:公式サイトから引用